※2000年9月24日の日記です。
初めての海外一人旅、4日目。
この日は、韓国を離れてタイへ向かう日だった。
9月21日に韓国へ到着してから、たった数日。
でも、その数日の中身が濃すぎた。
初日はホテルを予約していなくて、金浦空港でいきなりホテル難民になった。
英語もまともに通じず、観光案内所で途方に暮れ、謎のおじさんに連れられて、ようやくHaeng Ju Hotelにたどり着いた。
2日目は、よく分からない地名を頼りにタクシーで街へ出て、屋台で初めてチヂミを食べた。
しかも、自分がソウル市内にいないことを後から知るという雑さ。
3日目は、NETOMOで知り合った韓国の友人Wonと初めてリアルで会い、仁寺洞、景福宮、ソウルタワー、明洞を一日中案内してもらった。
韓国語も英語もろくに通じないのに、現地の友人と過ごす一日は本当に濃かった。
そして4日目。
韓国を出て、次の目的地であるタイ・バンコクへ向かう。
移動日だから少し落ち着くかと思いきや、そんなことはなかった。
空港での偶然の出会い。
バンコクでのホテル探し。
旅慣れたアメリカ人との出会い。
そして夜のナナプラザ。
この日もまた、初海外一人旅らしい、予定通りにいかない一日になった。
韓国最終日、静かにチェックアウト
この日は韓国最終日だった。
朝は特に予定もなく、10時にはホテルをチェックアウトすることにした。
数日前、初めてこのホテルに来たときは、本当に不安だった。
空港でホテルを探すところから始まり、連れてこられた先がHaeng Ju Hotel。
チェックイン用紙のどこに何を書けばいいのかも分からず、完全に固まっていた。
そのとき助けてくれたのが、片言の日本語を話せるホテルの女性スタッフだった。
「ココ、ナマエ、カイテ」
あの一言に、どれだけ救われたか分からない。
初めての海外。
言葉も分からない。
ホテルも予約していない。
そんな状態で聞こえた片言の日本語は、本当にありがたかった。
その後も、テレホンカードを逆に入れて電話がつながらなかったときに、「カード、ギャク」と教えてくれた。
今思えば、かなり恥ずかしい。
でも、その恥ずかしさも含めて、あのスタッフの存在は大きかった。
だから最後に、ちゃんとお礼を言いたかった。
「ありがとう」と言いたかった。
でも、チェックアウトのとき、その女性スタッフの姿は見えなかった。
少し残念だった。
初めての海外で、右も左も分からない中、あの人の存在はかなり大きかった。
最後にちゃんとお礼を言えなかったことは、今でも少し心残りとして残っている。
旅には、こういう小さな心残りがある。
大きな後悔ではない。
でも、思い出すたびに、
「あのとき、もう一度会えたらよかったな」
と思う。
早すぎる空港到着というミス
ホテルを出て、そのままタクシー乗り場へ向かった。
この日は、韓国からタイへの移動日。
乗る予定だったのは、大韓航空 KE651便。
16時05分発のフライトだった。
今なら、何時にホテルを出ればいいか、空港までの所要時間を調べて、チェックイン時間も見て、ある程度ちょうどよく動くと思う。
でも当時は違う。
スマホはない。
空港までの時間感覚もあやしい。
初めての海外一人旅で、国際線に乗り遅れたらどうしようという不安が大きかった。
「遅れたらどうしよう」
「乗れなかったら終わりだ」
「タイに行けなかったらどうなるんだ」
そんなことを考えて、かなりビビっていた。
結果、とにかく早く空港へ向かうことにした。
早ければ安心。
そう思ったのだ。
そして空港に到着したのは、お昼前。
出発は16時05分。
つまり、出発まで約4時間。
さすがに早すぎた。
「……やりすぎたな」
空港に着いてから、ようやく気づいた。
旅行初心者の不安が、完全に勝ちすぎていた。
遅れるよりはいい。
それは間違いない。
でも、4時間は長い。
しかも2000年当時の空港である。
今みたいにスマホで時間をつぶすこともできない。
これは、なかなかの待ち時間になった。
空港での時間の潰し方が下手すぎる
とりあえず出国手続きを済ませ、搭乗口付近へ移動した。
ここまで来れば、飛行機に乗り遅れる心配はかなり減る。
その安心感はあった。
しかし、問題はここからだった。
やることがない。
本当にやることがない。
スマホもない時代。
ネットも簡単には使えない。
今なら、スマホでニュースを読んだり、ブログの下書きをしたり、地図を見たり、動画を見たり、SNSを眺めたり、いくらでも時間を潰せる。
でも当時は、そうはいかない。
ただ座って、ぼーっとするしかない。
空港の椅子に座る。
周りを見る。
人が通る。
また時計を見る。
まだ時間がある。
またぼーっとする。
空港での時間の潰し方が、下手すぎる。
もともと読書家でもないし、旅先で分厚い本を読んで優雅に過ごすようなタイプでもない。
今ならノートPCやスマホがあれば何時間でも耐えられるかもしれない。
でも当時は、かなり手持ち無沙汰だった。
最終的に選んだ行動は、寝ることだった。
空港の椅子に座ったまま、完全に爆睡。
自分でもよく寝られたなと思う。
でも、初海外4日目。
韓国でかなり動き回ったあとだったので、疲れもたまっていたのだと思う。
目覚めたら隣にタイ人女性がいた
ふと目を覚ますと、時間は15時近くになっていた。
「やば、寝すぎたか?」
一瞬焦った。
でも搭乗時間にはまだ間に合う。
周りを見回すと、自分の隣にタイ人女性が座っていた。
年齢は、自分と同じくらいに見えた。
すると、その女性から突然声をかけられた。
「写真を撮ってくれない?」
海外でいきなり話しかけられると、少しびっくりする。
しかも、寝起きである。
頭がまだ完全には起きていない。
でも、写真を撮るくらいなら問題ない。
せっかくなので快くOKした。
写真を撮ってあげると、そこから軽く会話が始まった。
話を聞いてみると、その女性はタイ人。
アメリカに留学中で、今回はタイへ一時帰国するところだった。
韓国は乗り継ぎで寄っただけらしい。
初海外で右往左往している自分から見ると、かなりグローバルな人だった。
アメリカに留学していて、韓国を経由して、タイへ帰る。
移動のスケールが違う。
自分は韓国からタイへ行くだけでも、かなりドキドキしている。
それなのに、彼女にとってはもっと自然な移動なのかもしれない。
同じくらいの年齢に見えるのに、世界の広さが違った。
タイの情報を現地人から聞く
搭乗まで少し時間があったので、そのタイ人女性と会話をした。
自分はこれからタイに行く。
しかも初めてのタイ。
バンコクがどんな場所なのか、よく分かっていない。
そこで、いろいろ聞いてみた。
タイはどんな国なのか。
治安はどうなのか。
おすすめの場所はあるのか。
どんなことに気をつければいいのか。
ガイドブックで読む情報とは違い、実際にタイの人から聞く話にはリアルさがあった。
もちろん、細かい内容を全部覚えているわけではない。
自分の英語力も怪しかったので、どこまで正確に理解できていたかも分からない。
でも、現地の人から直接タイの話を聞くというだけで、かなりワクワクした。
「タイ、楽しそうだな……」
そう思った。
韓国での数日も濃かったけれど、次に行くタイはまた全然違う世界なのだろう。
韓国は日本に近い雰囲気もあった。
でもタイは、もっと南国で、もっと違う空気があるはず。
この時点で、バンコクへの期待がかなり高まっていた。
飛行機の中はほぼ寝て終わった
搭乗時間になり、それぞれ席へ向かった。
偶然にも、そのタイ人女性とは席が近かった。
「なんか縁があるな」
そう思った。
空港で隣に座っていて、写真を頼まれ、少し会話して、飛行機でも席が近い。
旅先では、こういう偶然がたまに起こる。
ただ、ここで自分は限界だった。
離陸後、すぐに爆睡した。
韓国での数日間の疲れ。
空港での長時間待機。
緊張感。
全部が一気に出たのだと思う。
初めての海外乗り継ぎフライト。
韓国からタイへ向かう飛行機。
本来なら、機内の雰囲気や食事、窓の景色をもっと覚えていてもよさそうなものだ。
でも、記憶がほとんどない。
気づいたら、もう到着直前だった。
ほぼ寝て終わった。
海外一人旅の記録としては、少しもったいない気もする。
でも、体は正直である。
寝るときは寝る。
初海外4日目の自分には、それだけの疲れがたまっていた。
バンコク到着、また新しい国へ
飛行機はタイに到着した。
韓国からタイへ。
同じ海外でも、また空気が変わる。
飛行機を降りて通路を歩いていると、さっきのタイ人女性が待っていてくれた。
「え、待っててくれたの?」
少し驚いた。
空港で少し会話しただけの相手だ。
それなのに、降りたあとに待っていてくれる。
海外でこういうことがあると、本当にうれしい。
初めてのタイ。
空港に着いたばかり。
言葉も分からない。
地理も分からない。
そんな中で、少しでも知っている人がそばにいるだけで安心感がある。
一緒に進むことになった。
すると、彼女の隣に大柄な外国人男性がいた。
紹介されると、どうやら機内で隣だったアメリカ人らしい。
名前を聞いたが、正直よく分からなかった。
発音も難しい。
自分の英語力も怪しい。
そこで、勝手に「エース」と呼ぶことにした。
本人も特に気にしていなかった。
今思うと、なかなか雑な命名である。
でも旅先では、こういう雑さで進むことがある。
エースという旅人に出会う
エースは、見た目がかなりガタイのいい人だった。
30代くらいで、いかにも海外を旅していそうな雰囲気があった。
最初は、少し怖い印象もあった。
大柄な外国人男性。
英語も早い。
こちらは初海外の大学生。
正直、少し身構えた。
でも、荷物受け取りのところで印象が変わった。
重そうな荷物を運んでいるおばさんを見て、エースは何も言わずに手伝っていた。
自然に手を貸していた。
その様子を見て、
「あ、この人いい人だな」
と思った。
見た目と中身のギャップ。
こういうのは、旅先でかなり印象に残る。
第一印象だけでは分からない。
怖そうに見える人が、実はとても親切だったりする。
逆に、優しそうに見えても油断してはいけないこともある。
旅では、人を見る目が試される。
エースの場合は、少なくともその場ではとても親切な人に見えた。
そして実際、このあと自分は彼にかなり助けられることになる。
タイ人女性との別れと電話番号
荷物を受け取ってロビーへ出ると、タイ人女性の家族が迎えに来ていた。
家族と合流した彼女は、ここで自分たちと別れることになった。
軽く挨拶をする。
空港でたまたま隣に座り、写真を撮り、少し話し、飛行機で近くの席になり、タイに着いてからも一緒に進んだ。
ほんの短い時間の出会いだった。
でも、初めてのタイに到着したばかりの自分にとっては、とても心強い存在だった。
最後に彼女は言ってくれた。
「困ったことがあったら連絡して」
そう言って、電話番号を渡してくれた。
海外でこういう優しさに触れると、少し胸にくる。
まだ会って間もない。
ただ空港で少し話しただけ。
それなのに、困ったら連絡していいと言ってくれる。
初海外の自分にとって、それはかなりありがたかった。
もちろん、実際に電話するかどうかは別問題だ。
でも、連絡先があるというだけで、少し安心した。
旅先で人に助けられる経験が、また一つ増えた。
バンコクでホテル難民になりかける
さて、問題はここからだった。
時間はすでに22時を回っていた。
そして、自分はホテルを決めていなかった。
完全にノープラン。
韓国初日でホテル未予約の怖さを経験したばかりなのに、タイでもまた同じようなことをしている。
学習能力があるのかないのか。
たぶん、かなり怪しい。
「どうしよう……」
空港のロビーで少し不安になる。
初めてのバンコク。
夜。
ホテル未定。
これはなかなか厳しい。
今なら絶対にやらない。
最低でも初日のホテルは予約する。
住所も控える。
空港からの行き方も確認する。
でも当時は、まだどこかで「なんとかなるだろ」と思っていた。
そして、なんとかなった。
というより、エースがなんとかしてくれた。
エースが一言言った。
「安いホテル知ってるよ」
神か。
韓国初日は謎のおじさんに助けられ、タイ初日はエースに助けられる。
初海外一人旅、完全に人の優しさで進んでいる。
エースとタクシーでホテルへ向かう
そのままエースと一緒にタクシーに乗ることになった。
バンコクの夜。
空港からホテルへ向かうタクシー。
外の景色は、韓国とはまた全然違っていたと思う。
ただ、細かい景色よりも、エースとの会話のほうが印象に残っている。
道中、彼はいろいろ話してくれた。
中国人の奥さんがいること。
奥さんはアメリカに残してきていること。
これまで30カ国以上を旅行していること。
次はフィリピンに行く予定だということ。
スケールが違う。
30カ国以上。
自分は初海外で、韓国からタイへ移動しただけでかなりドキドキしている。
それに対して、エースはもう世界中を旅している人だった。
完全に旅慣れている。
正直、ちょっとうらやましかった。
こういう人を見ると、自分の世界がまだまだ小さいことを感じる。
同時に、旅を続ける人って本当にいるんだなと思った。
深夜特急を見て憧れたバックパッカーの世界。
その中にいるような人が、目の前に座っていた。
初バンコクのホテルに到着
タクシーで30〜40分ほど走り、ホテルに到着した。
名前は、Ruamchitt Travelodge。
ここが、初バンコクでの宿になった。
受付でチェックイン。
ここでも緊張したと思う。
韓国でホテルのチェックインには一度苦戦している。
でも今回はエースがいたので、かなり心強かった。
そして、ここで正直な感想があった。
受付の女性が、めちゃくちゃかわいかった。
いや、これは書いておきたい。
海外に来てテンションが上がっていたのもあると思う。
初めてのタイ。
夜のバンコク。
旅慣れたアメリカ人に連れられてホテルに入り、受付に立つ女性が普通にタイプだった。
そりゃ印象に残る。
大学生の自分である。
そこは正直だった。
チェックインを終えると、エースは178号室。
自分は179号室。
隣同士の部屋だった。
部屋に入って荷物を置く。
「やっと落ち着いた……」
本当にそう思った。
韓国を出て、タイに着いて、ホテルも決まった。
これでようやく安心できる。
……と思ったのだが、この日はまだ終わらなかった。
夜のバンコクへ誘われる
部屋に入って少し落ち着いた頃、ドアをノックする音がした。
開けると、エースだった。
そして一言。
「飲みに行かない?」
……行くでしょ。
初めてのバンコク。
夜。
旅慣れたエースからの誘い。
ここで断る理由はあまりなかった。
もちろん、少し疲れていた。
韓国から移動してきたばかり。
飛行機では寝たとはいえ、初めてのタイに到着して、ホテルまで来るだけでも神経を使っている。
本当なら、そのままシャワーを浴びて寝てもよかった。
でも、バンコクの夜を見てみたい気持ちのほうが勝った。
若かったのだと思う。
今の47歳の自分なら、翌日の体調を考えて少し迷う。
いや、たぶん迷いながらも行くかもしれない。
でも当時なら、ほぼ即決だった。
エースについて、夜のバンコクへ出ることになった。
ナナプラザという異世界
向かった先は、ナナプラザだった。
これがまた、すごい場所だった。
コの字型の建物で、3階建て。
中も外もバーだらけ。
ネオンが光っている。
音楽が鳴っている。
人が多い。
とにかくにぎやか。
日本では見たことのない空間だった。
「ここがバンコクの夜か……」
完全に別世界だった。
昼の観光地ではない。
静かな街並みでもない。
空港でもホテルでもない。
夜の歓楽街の空気。
初海外一人旅の大学生には、かなり刺激が強かった。
正直、少し圧倒された。
どこを見ても情報量が多い。
バー。
ネオン。
外国人。
音楽。
呼び込みのような声。
明るいけれど、少し怪しい。
楽しいようで、少し怖い。
そういう空気が混ざっていた。
バンコクに来たという実感が、一気に強くなった。
韓国とは全然違う。
同じアジアでも、ここまで雰囲気が変わるのかと思った。
2階のバーで軽く一杯
エースと一緒に、2階のバーに入った。
中では西洋人がビリヤードをしていたり、自由な空気が流れていた。
日本の居酒屋とも違う。
韓国の店とも違う。
本当に海外のバーという感じだった。
エースにビールをごちそうしてもらった。
ありがたい。
初めてのバンコクの夜に、旅先で会ったアメリカ人にビールをごちそうになる。
自分の人生の中でも、なかなか不思議な場面である。
少し会話をした。
英語は完璧には通じない。
というか、かなり怪しい。
でも、なんとなくで会話は成立した。
この「なんとなく」が、海外一人旅ではけっこう大事だった。
完璧な英語でなくても、相手が話そうとしてくれて、自分も分かろうとすれば、少しは通じる。
もちろん細かい話は難しい。
冗談も全部は分からない。
でも、ビールを飲みながら、旅の話を少しする。
それだけで十分だった。
刺激が強すぎて少し疲れる
ナナプラザは、かなり刺激的な場所だった。
初めてのバンコクの夜。
ネオン。
音楽。
バー。
外国人。
人の熱気。
全部が強かった。
最初はテンションが上がった。
でも、だんだん少し疲れてきた。
韓国からの移動日で、すでに一日が長かった。
早く空港に着きすぎて、空港で寝た。
タイ人女性と出会った。
飛行機で寝た。
バンコクに着いた。
エースと出会った。
ホテルを探した。
チェックインした。
そしてナナプラザに来た。
そりゃ疲れる。
刺激が強い場所は、楽しいけれど体力を使う。
しかも初めての場所。
周りの様子をずっと見てしまう。
何が普通なのか分からない。
どう振る舞えばいいのかも分からない。
エースがいるから安心感はあったけれど、自分自身は完全に初心者だった。
長居はせず、自分は一人でホテルへ戻ることにした。
一人でホテルへ戻る夜
エースとは別れて、自分は一人でホテルへ戻った。
初めてのバンコクの夜。
一人でホテルに戻る道は、少し緊張したと思う。
さっきまでのにぎやかさが頭に残っている。
ネオンや音楽の余韻もある。
でも体は疲れている。
ホテルの部屋に戻ると、ようやく本当に落ち着いた。
この日は、本当に濃かった。
朝は韓国にいた。
昼には韓国の空港で時間を持て余していた。
夕方にはタイへ向かう飛行機に乗っていた。
夜にはバンコクに着き、タイ人女性と別れ、エースと出会い、ホテルに入り、ナナプラザへ行った。
1日の中で、国も空気も人間関係も一気に変わった。
旅行というより、何かの展開が早い映画みたいだった。
でも、それが初海外一人旅だった。
計画通りではない。
準備万端でもない。
でも、人との出会いで道がつながっていく。
自分一人では絶対にたどり着けなかった夜だった。
旅慣れた人への憧れ
この日、エースと出会って強く感じたのは、旅慣れた人への憧れだった。
エースは、30カ国以上を旅していると言っていた。
中国人の奥さんがいて、次はフィリピンへ行く予定。
空港でも自然に人を助け、ホテルも知っていて、夜の街にも慣れている。
自分とは全然違う。
自分は初海外。
ホテル探しにも苦労する。
電話カードを逆に入れる。
現在地もよく分からない。
そんな自分から見ると、エースはかなり大人の旅人に見えた。
もちろん、彼の人生の詳しいことは分からない。
短い時間しか一緒にいない。
でも、旅先で出会う人というのは、短い時間でも強く印象に残ることがある。
エースはまさにそうだった。
見た目は少し怖そう。
でも実際は親切。
荷物を運ぶ人を助ける。
ホテルを教えてくれる。
ビールをごちそうしてくれる。
こういう人に出会うと、海外一人旅の楽しさが一気に広がる。
旅は人でできていると思った
韓国でWonと過ごした3日目にも思った。
海外って、人なんだなと。
そして、タイに着いたこの日も同じことを思った。
空港で声をかけてくれたタイ人女性。
困ったら連絡してと言って、電話番号を渡してくれた優しさ。
バンコクで出会ったエース。
ホテルを教えてくれて、一緒にタクシーに乗り、ナナプラザに連れて行ってくれた。
韓国では、ホテルの女性スタッフ、Won、日本人留学生、屋台のおばさんに助けられた。
タイでも、到着してすぐ人に助けられた。
景色も大事。
食べ物も大事。
観光地も楽しい。
でも、一番記憶に残るのは、やっぱり人だった。
自分がどこへ行ったかより、誰と出会ったか。
その人が何を言ったか。
どう助けてくれたか。
一緒に何をしたか。
それが旅の記憶を作っていく。
この日は、韓国からタイへ移動した日だった。
でも、単なる移動日ではなかった。
人との出会いが、旅を次の段階へ進めてくれた日だった。
まとめ
初めての海外一人旅4日目は、韓国を離れてタイ・バンコクへ向かう移動日だった。
韓国最終日の朝、10時にHaeng Ju Hotelをチェックアウトした。
本当は、これまで何度か助けてもらったホテルの女性スタッフにお礼を言いたかった。
初日にチェックインを助けてくれたり、テレホンカードを逆に入れていたことを教えてくれたりした人だ。
初海外で右も左も分からない自分にとって、あの人の存在はかなり大きかった。
でも最後に姿を見ることはできず、少し心残りを感じながらホテルを後にした。
この日は16時05分発の大韓航空KE651便でタイへ向かう予定だった。
乗り遅れるのが怖くて、かなり早めに空港へ向かった結果、お昼前には到着してしまった。
出発まで約4時間。
完全に早すぎた。
スマホもない時代で、空港での時間つぶしも下手だった自分は、出国手続きを済ませたあと、搭乗口付近の椅子でそのまま爆睡した。
目を覚ますと15時近く。
隣にはタイ人女性が座っていた。
彼女から「写真を撮ってくれない?」と声をかけられ、そこから少し会話が始まった。
彼女はアメリカに留学中で、今回はタイへ一時帰国するところだった。
韓国は乗り継ぎで寄っただけ。
自分と同じくらいの年齢に見えたが、かなりグローバルな人だった。
これからタイに行く自分は、タイの治安やおすすめの場所など、いろいろ聞いてみた。
現地の人から直接話を聞けたことで、タイへの期待が一気に高まった。
飛行機では、偶然その女性と席が近かった。
ただ、自分は離陸後すぐに爆睡。
初めての韓国からタイへのフライトは、ほぼ寝て終わった。
バンコクに到着して飛行機を降りると、そのタイ人女性が待っていてくれた。
少し驚きつつ一緒に進むと、彼女の隣には大柄なアメリカ人男性がいた。
機内で隣だった人らしい。
名前は聞いたものの発音が難しく、正直よく分からなかったので、自分の中では勝手に「エース」と呼ぶことにした。
エースは見た目こそ少し怖そうだったが、荷物受け取りのところで重そうな荷物を運んでいるおばさんを自然に手伝っていた。
それを見て、「この人いい人だな」と思った。
タイ人女性とは、家族が迎えに来ていたのでロビーでお別れ。
最後に「困ったことがあったら連絡して」と電話番号を渡してくれた。
海外でこういう優しさに触れると、本当にうれしい。
そして、ここからまた問題が始まった。
時間はすでに22時を回っている。
なのに、自分はホテルを決めていなかった。
韓国初日でホテル未予約の怖さを経験したのに、タイでもまたノープラン。
どうしようと思っていると、エースが「安いホテル知ってるよ」と言ってくれた。
本当に助かった。
そのままエースと一緒にタクシーに乗り、ホテルへ向かった。
道中、エースからは、中国人の奥さんがいること、これまで30カ国以上を旅していること、次はフィリピンへ行く予定だという話を聞いた。
完全に旅慣れている人だった。
初海外の自分から見ると、かなりうらやましく、そしてかっこよく見えた。
30〜40分ほどで到着したホテルは、Ruamchitt Travelodge。
受付でチェックインをしたとき、正直に言うと、受付の女性がめちゃくちゃかわいかった。
海外に来てテンションが上がっていたのもあるが、普通にタイプだった。
エースは178号室、自分は179号室。
部屋に入って荷物を置き、「やっと落ち着いた」と思ったところで、ドアをノックする音がした。
エースだった。
「飲みに行かない?」
当然、行くことにした。
向かった先はナナプラザ。
コの字型の3階建ての建物で、中も外もバーだらけ。
ネオンが光り、音楽が鳴り、とにかくにぎやかで、日本では見たことのない空間だった。
「ここがバンコクの夜か」と思った。
2階のバーに入り、エースにビールをごちそうしてもらった。
中では西洋人がビリヤードをしていて、自由な空気が流れていた。
英語は完璧には通じなかったけれど、なんとなく会話はできた。
これもまた面白かった。
ただ、初めてのバンコクの夜は刺激が強かった。
韓国から移動してきた疲れもあり、長居はせず、自分は一人でホテルへ戻ることにした。
この日は、韓国からタイへの移動日だった。
でも、単なる移動日ではなかった。
空港でタイ人女性と出会い、バンコクでエースという旅人と出会い、初めてナナプラザという夜の異文化に触れた。
全部が初めてで、全部が刺激的だった。
そして改めて思った。
旅って、人でできている。
場所よりも、景色よりも、一番記憶に残るのはやっぱり人だ。
韓国でもそうだった。
タイに着いてからもそうだった。
この日出会った人たちが、この後の旅をさらに面白くしていく。
そんな予感がした一日だった。
韓国を離れて、タイへ。
初海外一人旅は、ここからまた別の章に入った。
そしてバンコクの夜は、想像以上に濃かった。
若い自分には刺激が強すぎたけれど、あのときの「なんだここは」という感覚は、今でも忘れられない。