※2000年9月22日の日記です。
初めての海外一人旅、2日目。
昨日は成田から大韓航空で韓国へ向かい、金浦空港に到着したものの、ホテルを予約していなかったせいで、いきなりホテル難民になった。
観光案内所で英語が通じず、30分くらい待たされ、謎のおじさんに連れられて、ようやくHaeng Ju Hotelに到着。
チェックインでも何を書けばいいのか分からず、片言の日本語を話せるホテルの女性スタッフに助けてもらった。
そのあと、Wonに電話しようとしてテレホンカードを逆に入れるという、初海外らしいというか、ただの凡ミスというか、なかなか情けない事件も起こした。
そんなこんなで、1日目は「海外に着いた」というより、「なんとか寝る場所を確保した」という感じで終わった。
そして迎えた2日目。
この日は、完全にノープランだった。
予定がない。
誰かと会う約束もまだない。
行きたい観光地も決めていない。
「さて、何しようか」
朝から、いきなり自由すぎて困る状態になった。
これが一人旅の良さでもあり、怖さでもある。
予定なしの2日目、とりあえず外に出る
海外一人旅2日目の朝。
昨日の疲れは、まだ少し残っていた。
初めての海外で、初日からホテル探しに苦戦する。
言葉は通じない。
空港で迷う。
電話もまともに使えない。
今思えば、かなり体も頭も疲れていたはずだ。
でも、せっかく韓国に来たのに、ホテルの部屋にずっといるのももったいない。
何かしなければ。
どこかへ行かなければ。
そんな気持ちだけはあった。
ただ、何をするかが決まっていない。
今なら、スマホで近くの観光地を調べる。
地図アプリで行き方を確認する。
レビューを見て、店を探す。
翻訳アプリもある。
でも2000年当時は、そんな便利なものはない。
情報がない中で動くしかない。
旅行ガイドブックを持っていたとしても、細かい現在地や近くの店まで全部分かるわけではない。
つまり、かなり勘に頼る旅だった。
とりあえず、ホテルのスタッフに聞いてみることにした。
昨日チェックインを助けてくれた、日本語が少し話せるスタッフの子である。
初海外2日目にして、すでにその存在がかなり心強かった。
ホテルスタッフにショッピングできる場所を聞く
自分は、ホテルのスタッフに聞いた。
「ショッピングできる場所ってどこですか?」
たぶん、こんな感じのことを、片言の英語と日本語とジェスチャーで伝えたのだと思う。
すると、スタッフの子は紙に地名を書いてくれた。
「Hwa Jeong」
読み方は、自分には「ファーザン」と聞こえた。
そこからタクシーで5分くらいらしい。
タクシーで5分。
近い。
これは行けそうだ。
自分の中で、一気に目的地ができた。
ただ、今振り返ると、この地名は少し怪しい。
後で調べても、当時自分が思っていたような形でははっきり出てこない。
もしかしたら聞き間違いだったのかもしれない。
あるいは、自分が発音を全然聞き取れていなかったのかもしれない。
そもそも、紙に書いてもらったローマ字表記を自分がどう読んだのかも、今となってはあやしい。
でも当時の自分は、そんな細かいことは気にしなかった。
「よし、行ってみよう」
本当にそのくらいの軽いノリだった。
初海外2日目の大学生は、今の自分よりずっと雑である。
でも、その雑さが旅を動かしていた。
海外で初めてタクシーに乗る
目的地が決まったので、タクシーに乗ることにした。
海外で初めてのタクシー。
これがまた難関だった。
今ならタクシー配車アプリで目的地を入れればいい。
行き先も料金も、ある程度分かる。
運転手と話さなくても何とかなる。
でも当時は違う。
道端でタクシーをつかまえる。
行き先を伝える。
運転手が理解してくれることを祈る。
かなり原始的である。
自分は、ホテルスタッフが書いてくれたメモを運転手に見せた。
しかし、運転手には英語が通じなかった。
全く通じない。
ここで、また言葉の壁である。
昨日から何度目だろうか。
初海外というのは、こんなにも言葉にぶつかるものなのか。
日本にいると、言葉が通じることを当たり前だと思っている。
店に入っても、駅で聞いても、タクシーに乗っても、日本語でどうにかなる。
でも海外ではそうはいかない。
こちらの英語も怪しい。
相手も英語を話すとは限らない。
メモを見せて、ジェスチャーして、雰囲気で伝えるしかない。
年配の運転手に英語は通じなかった
タクシーの運転手は、年配の方だった。
韓国では、若い人なら日本語や英語を少し話せる人も多い印象があった。
実際、ホテルのスタッフも片言の日本語を話してくれた。
でも、年配の人はそうでもない。
このとき、それを現地で初めて実感した。
日本でも同じだと思う。
若い人のほうが英語に触れる機会は多い。
年配の人にいきなり英語で話しかけても、通じないことは普通にある。
韓国でもそれは同じだった。
自分はメモを見せる。
運転手は何か言う。
自分は分からない。
自分が何か言う。
運転手も分からない。
なかなかの地獄である。
それでも、しばらくやり取りしているうちに、ようやく理解してくれたようだった。
タクシーは出発した。
しかし、この時点で自分は少し不安だった。
「ちゃんと着くよな……?」
メモの地名も、自分の理解があやしい。
運転手にちゃんと伝わったのかも分からない。
タクシーは走り出した。
もうあとは、信じるしかない。
着いた場所は思ったより都会だった
しばらくして、タクシーは目的地らしき場所に到着した。
降りた瞬間に思った。
「え、ここ普通に都会じゃん」
想像していたより、はるかに大きい。
もっと小さな町の商店街みたいな場所を想像していた。
でも実際は、かなり店も多く、人通りもある。
感覚としては、東京でいうと池袋とか、そのあたりに近い規模感に思えた。
もちろん、細かく比べれば全然違うのだろうけれど、当時の自分には「普通に都会」と感じた。
ビルがあって、店があって、人が歩いている。
買い物ができそうな雰囲気がある。
平日だったからか、若者はそこまで多くなかった。
でも、街としては十分ににぎわっていた。
「当たり引いたかも」
そう思った。
昨日は空港からホテル探しで精いっぱいだった。
韓国の街を楽しむ余裕なんてほとんどなかった。
でも2日目にして、ようやく「海外の街に来た」という感じがしてきた。
知らない言葉の看板。
知らない店。
知らない人の流れ。
その中を一人で歩く。
怖さもあるけれど、それ以上にワクワクした。
言葉は分からないけど街歩きは楽しい
目的地に着いてからは、特に決まった予定もなく、街をぶらぶら歩いた。
看板に書かれている文字は、当然ハングル。
読めない。
何の店なのか、外から見ただけでは分からないものも多い。
でも、それが面白かった。
日本にいると、看板を見ればだいたい分かる。
飲食店なのか、服屋なのか、病院なのか、美容室なのか。
でも海外では、文字が読めないだけで、街全体が少し謎になる。
何が売っているのか。
どんな人が入る店なのか。
安いのか高いのか。
全部が分からない。
分からないことが、不安でもあり、楽しくもある。
店の前を通りながら、中をちらっと見る。
人の流れについて歩いてみる。
興味があれば入ってみる。
でも、入りづらい店は素通りする。
今ならスマホで翻訳して、レビューも見られる。
でも当時は、勘と雰囲気だけだった。
それでも、街を歩いているだけで楽しかった。
初めての海外一人旅。
2日目にして、ようやく旅らしい時間が始まった気がした。
匂いに釣られて屋台へ向かう
しばらく歩いていると、お腹が空いてきた。
そういえば、朝からそこまでしっかり食べていなかったのかもしれない。
海外にいると、緊張で空腹に気づくのが遅れることがある。
でも、体は正直である。
歩けばお腹が空く。
そのとき、どこからかいい匂いがしてきた。
完全に吸い寄せられるやつだった。
匂いの方向に行くと、屋台で何かを焼いているおばさんがいた。
鉄板の上で、丸く平たいものを焼いている。
見た目は、日本のお好み焼きに少し似ていた。
でも、違う。
具も違う。
雰囲気も違う。
それが、韓国のチヂミだった。
ニラがたっぷり入っていて、タレは醤油ベースのように見えた。
当時の自分は、韓国料理にそこまで詳しくなかった。
チヂミという言葉は知っていたかもしれないけれど、本場の屋台で食べるのはもちろん初めて。
目の前で焼かれているものを見て、
「これは食べてみたい」
と思った。
初めてのチヂミを買ってみる
言葉は通じない。
注文の仕方も分からない。
でも、目の前に食べたいものがある。
こういうとき、人間はなんとかする。
指差し。
ジェスチャー。
お金を見せる。
たぶんそんな感じで注文したのだと思う。
今思うと、かなり原始的な買い方だ。
でも、屋台ではそれで何とかなった。
おばさんは慣れているのか、こちらが外国人だと分かっても、特に困った様子はなかった。
チヂミを用意してくれる。
焼かれた生地の香ばしい匂い。
ニラの匂い。
タレの匂い。
全部が混ざって、かなり食欲を刺激してくる。
日本のお好み焼きとは違う。
ソースとマヨネーズの濃い感じではなく、もっとシンプル。
でも、これはこれで絶対にうまいだろうという見た目だった。
初めての韓国屋台。
初めてのチヂミ。
言葉は分からないけれど、食べ物の前では少し強くなれる。
食欲は、わりと国境を越える。
食べ方が分からず戸惑う
チヂミを受け取ったものの、次の問題が出てきた。
食べ方が分からない。
日本のお好み焼きみたいに、そのままかぶりつくのか。
箸で切るのか。
タレをどうつけるのか。
どこまで自分でやるのか。
細かいことが分からない。
こういうとき、日本なら周りを見れば何となく分かる。
でも海外だと、その場のルールがよく分からない。
一瞬、手が止まる。
すると、おばさんがそれに気づいてくれた。
そして、ハサミでチヂミを細かくカットしてくれた。
さらに、ジェスチャーで「こうやって食べるのよ」という感じで教えてくれた。
これが、本当にありがたかった。
言葉は通じない。
でも、困っていることに気づいてくれる。
そして、分かるように教えてくれる。
海外にいると、こういう小さな優しさがものすごくしみる。
昨日のホテルスタッフもそうだった。
空港で案内してくれたおじさんもそうだった。
今日の屋台のおばさんもそう。
初海外の自分は、いろんな人に助けられてばかりだった。
言葉が通じなくても優しさは伝わる
チヂミを切ってくれたおばさんの対応は、今でも印象に残っている。
大げさな出来事ではない。
ただ、食べやすいように切ってくれただけ。
ジェスチャーで食べ方を教えてくれただけ。
でも、当時の自分にはそれがすごく大きかった。
海外というと、行く前は少し怖いイメージもあった。
言葉が通じない。
迷ったらどうしよう。
だまされたらどうしよう。
危ない目に遭ったらどうしよう。
そんな不安があった。
実際、初日から不安になることは多かった。
でも、その一方で、人の優しさにも何度も助けられた。
言葉が通じなくても、伝わるものはある。
困っている人を見て、手を貸してくれる人がいる。
ジェスチャーだけでも、十分に伝わることがある。
もちろん、海外ならどこでも安全という話ではない。
警戒は必要だし、今の自分ならもっと慎重に行動する。
でも、当時の自分が旅を嫌にならなかったのは、こういう人たちに助けられたからだと思う。
チヂミを切ってくれた屋台のおばさん。
あの瞬間、自分は少し韓国という国に安心したのかもしれない。
初めて食べたチヂミはシンプルでうまかった
食べてみると、チヂミはシンプルだけど美味しかった。
ニラの風味。
焼いた生地の香ばしさ。
醤油ベースのタレ。
日本のお好み焼きとは全然違う。
お好み焼きは、ソースやマヨネーズの味がかなり強い。
でもチヂミは、もっと素朴で、素材の味が分かる感じだった。
「これ、いいな」
素直にそう思った。
海外で初めて食べるものには、少し緊張がある。
口に合うのか。
食べ方は合っているのか。
お腹は大丈夫なのか。
いろいろ気になる。
でも、その不安を超えて美味しいものに出会うと、一気にその土地が好きになる。
チヂミは、その最初の体験だったかもしれない。
韓国料理といえば、焼肉やキムチのイメージが強かった。
でも、屋台で食べるチヂミには、また違う魅力があった。
高級な店ではない。
立派なレストランでもない。
でも、街を歩いて、匂いに釣られて、屋台で買って食べる。
これが旅っぽかった。
2日目にして、ようやく自分の中で「旅してるな」という感覚が強くなった。
ゲームセンターに入ってみる
チヂミを食べたあとは、また街をぶらぶらした。
特に目的はない。
気になったところに入ってみる。
そういう時間だった。
その中で、ゲームセンターにも入った。
当時の自分にとって、ゲームセンターは入りやすい場所だったのかもしれない。
言葉が分からなくても、ゲームならなんとなく分かる。
画面を見れば、何をするものかだいたい想像できる。
ボタンを押す。
レバーを動かす。
コインを入れる。
言葉が通じなくても遊べるものがある。
海外のゲームセンターは、日本とは少し雰囲気が違った。
置いてあるゲームや、店の空気、人の様子。
細かい記憶は薄れているけれど、日本とは違う場所にいる感じはあった。
ゲームそのものよりも、「韓国のゲームセンターに入っている自分」が少し面白かった。
日本にいたら、ただのゲームセンター。
でも海外で入ると、それだけでちょっとした冒険になる。
こういう小さな体験が、一人旅では妙に記憶に残る。
公園で少し休む
街を歩いたり、ゲームセンターに入ったりしているうちに、少し疲れてきた。
初海外2日目。
昨日の疲れもある。
言葉が通じない場所にいるだけで、思った以上に体力を使う。
ただ歩いているだけでも、周りの情報を必死に読み取ろうとしているのだと思う。
看板。
人の流れ。
車の動き。
店の雰囲気。
全部が日本とは違う。
だから、ぼーっと歩いているようで、頭はかなり働いている。
途中で、公園のような場所で少し休んだ。
ベンチに座ったのか、ただ立ち止まったのか、細かいことはもう覚えていない。
でも、そこで少し落ち着いた記憶がある。
知らない街で一人で休む。
周りでは、現地の人たちが普通に生活している。
自分だけが旅行者で、言葉も分からず、地名もあやしい。
でも、その場所に座っている。
不思議な感覚だった。
旅先で休んでいる時間は、観光している時間とは違う。
何かを見るわけでもない。
何かを食べるわけでもない。
ただ、その街の中にいる。
それだけで、少し旅が深くなる気がした。
ここがどこなのか分からなくなる
しばらく街を歩いているうちに、ふと思った。
「ここ、どこなんだろう」
最初から地名はあやしかった。
ホテルのスタッフに書いてもらった「Hwa Jeong」。
自分には「ファーザン」と聞こえた場所。
タクシーで5分くらいと言われて来た。
でも、実際に自分がどこにいるのか、正確にはよく分かっていなかった。
地図もちゃんと見ていない。
スマホもない。
韓国語も読めない。
周りの看板を見ても、地名の確認すら難しい。
今なら、かなり不安になる状況だ。
でも当時は、どこか適当だった。
「まあ、ホテルには戻れるだろう」
そんな感じだったと思う。
今思うと、危なっかしい。
ホテルの名前や住所をちゃんと控えていたから戻れたのだと思うけれど、それでもかなり雑である。
ただ、一人旅にはこういう瞬間がある。
自分がどこにいるのか、よく分からない。
でも、目の前の街は動いている。
人が歩いている。
店が開いている。
屋台の匂いがする。
その中に自分がいる。
不安と面白さが、同じくらいあった。
ホテルへ戻ってWonに電話する
街を一通り歩いたあと、ホテルへ戻った。
どうやって戻ったのか、細かい記憶はあまりない。
たぶんタクシーか何かで戻ったのだと思う。
とにかく、無事にホテルへ戻ることができた。
ホテルに戻ると、少し安心する。
初日、苦労して確保したHaeng Ju Hotel。
まだ一泊しかしていないのに、すでに自分の基地のように感じていた。
海外一人旅では、ホテルの部屋の存在が大きい。
外では言葉が通じない。
街も分からない。
何が起こるか分からない。
でも、ホテルに戻れば荷物があり、ベッドがあり、少し落ち着ける。
まさに拠点である。
ホテルに戻ってから、Wonに電話をした。
昨日、土曜日に会う約束をした相手だ。
Wonは、NETOMOで知り合った韓国人。
ネットの画面越しに知り合った相手と、いよいよ明日会う。
電話で話すと、Wonは「明日ホテルまで行くよ」と言ってくれた。
ありがたい。
正直、自分がどこかへ待ち合わせに行くより、ホテルまで来てくれるほうがずっと安心だった。
自分がソウルにいないと知る
Wonとの電話で、衝撃の事実が分かった。
どうやら、自分がいる場所はソウル市内ではないらしい。
「え?」
昨日からずっと、自分はソウルにいると思っていた。
韓国に来た。
金浦空港に着いた。
ホテルに泊まった。
だから、なんとなくソウルだと思っていた。
完全な思い込みだった。
実際には、ソウルではない場所にいたらしい。
じゃあ、ここはどこなんだよ。
そう思った。
でも、この時点ではもう、どうでもよくなっていた。
「まあ韓国だし大丈夫か」
この適当さ。
今の自分なら、さすがにもう少し気にする。
現在地を確認する。
ホテルの住所を調べる。
ソウル市内からどのくらい離れているのか確認する。
でも当時の自分は、そこまで深く考えていなかった。
韓国にいる。
ホテルもある。
明日Wonが来てくれる。
なら大丈夫。
そんな感じだった。
適当すぎる。
でも、これが初海外一人旅の自分だった。
ソウルじゃなくても韓国は韓国
自分がソウル市内にいないと分かったとき、少し驚いた。
でも、不思議とそこまで焦らなかった。
たぶん、2日目の街歩きがそれなりに楽しかったからだと思う。
知らない街だった。
地名もあやしい。
言葉も通じない。
でも、チヂミは美味しかった。
屋台のおばさんは優しかった。
街は思ったより都会だった。
ゲームセンターにも入った。
公園で休んだ。
それだけで、自分の中では「今日はちゃんと旅をした」という満足感があった。
ソウルかどうかは、そこまで重要ではなくなっていた。
もちろん、旅行計画としては大事なことだ。
でも、その日の自分にとっては、目の前の街がすべてだった。
名前が正確に分からなくても、そこに行って歩いた。
食べた。
困った。
助けられた。
それで十分だった。
今思うと、この感覚は少し一人旅らしい。
有名観光地に行くことだけが旅ではない。
自分がどこにいるのかよく分からないまま、知らない街を歩く。
それも、旅の記憶になる。
一人旅は自由すぎて少し不安
2日目を振り返ると、一人旅の自由さと不安が両方あった日だった。
誰にも合わせなくていい。
何時に出てもいい。
どこへ行ってもいい。
食べたいものを食べればいい。
疲れたら休めばいい。
この自由さは、一人旅の大きな魅力だ。
でも、自由すぎると逆に困る。
予定がないと、何をしていいのか分からない。
誰かが「今日はここへ行こう」と決めてくれるわけではない。
自分で決めるしかない。
そして、何か失敗しても、自分でどうにかするしかない。
タクシーの運転手に行き先が通じない。
店で注文の仕方が分からない。
自分がどこにいるのか分からない。
そういうとき、隣に相談できる相手はいない。
全部自分で受ける。
それが一人旅の怖さでもあり、面白さでもある。
この日は、まさにそれを体で覚えた気がする。
うまく話せなくても何とかなる
2日目も、言葉にはずっと苦労した。
ホテルスタッフには、なんとか聞けた。
タクシーの運転手には、英語が通じなかった。
屋台のおばさんとは、ほぼジェスチャーだった。
街の看板は読めない。
自分のいる場所もよく分からない。
それでも、なんとかなった。
もちろん、これは運が良かった部分も大きい。
相手が親切だった。
危ない目に遭わなかった。
ホテルに戻れた。
だからこそ言えることでもある。
でも、言葉が完璧に通じなくても、旅はできるのだと実感した。
片言でもいい。
単語でもいい。
紙に書いてもらってもいい。
指差しでもいい。
ジェスチャーでもいい。
笑ってごまかすこともある。
それでも、なんとかなる場面はある。
日本にいると、間違えることを怖がりすぎることがある。
変な英語を話したら恥ずかしい。
通じなかったらどうしよう。
そう思って黙ってしまう。
でも海外では、黙っていたら何も進まない。
下手でも話す。
通じなければ見せる。
分からなければ聞く。
その繰り返しだった。
初チヂミは旅の記憶になった
この日の一番の思い出は、やっぱり初めて食べたチヂミだった。
豪華な食事ではない。
有名店に行ったわけでもない。
ガイドブックに載っていた店でもない。
匂いに釣られて、屋台で買っただけ。
でも、それがよかった。
自分で見つけた感じがあった。
言葉が分からない中で注文して、おばさんに食べ方を教えてもらって、ハサミで切ってもらって食べる。
これが旅の記憶として残った。
もしこれが、きれいなレストランで日本語メニューを見ながら食べたチヂミだったら、ここまで覚えていなかったかもしれない。
もちろん、それはそれで美味しかったと思う。
でも、この日のチヂミには、言葉が通じない不安や、おばさんの優しさや、知らない街の匂いが全部くっついている。
だから忘れにくい。
食べ物の記憶は、味だけではない。
どこで、誰に、どんな気持ちで食べたか。
それが一緒に残る。
この日のチヂミは、初海外一人旅2日目の象徴みたいな食べ物だった。
明日はいよいよWonと会う
この日の夜、Wonと電話で話して、明日ホテルまで来てくれることになった。
ネットで知り合った韓国人のWon。
画面の中でしか知らなかった相手と、いよいよ実際に会う。
正直、少し緊張もあったと思う。
どんな人なのか。
ちゃんと会えるのか。
会話はできるのか。
英語で話すのか、日本語が少し通じるのか。
分からないことだらけだった。
でも、それ以上に楽しみだった。
この旅の目的の一つが、いよいよ現実になる。
初日はホテルを確保するだけで精いっぱい。
2日目は知らない街を一人で歩いた。
そして3日目は、ネットで知り合った人と実際に会う。
旅が少しずつ動き出している感じがした。
昨日までは不安のほうが大きかった。
でも2日目を終える頃には、少しだけ自信も出てきた。
言葉が通じなくても、なんとかなる場面はある。
知らない街でも歩ける。
屋台でも食べられる。
ホテルにも戻れる。
この小さな成功体験が、明日への気持ちを少し軽くしてくれた。
まとめ
初めての海外一人旅2日目は、完全にノープランで始まった。
前日は韓国に到着したものの、ホテルを予約していなかったせいで、金浦空港からいきなりホテル探しに苦戦。
英語も通じず、謎のおじさんに助けられて、なんとかHaeng Ju Hotelにたどり着いた。
そんな初日を終えて迎えた2日目。
「さて、何をしようか」と思いながら、とりあえず外に出ることにした。
ホテルの日本語が少し話せるスタッフに、ショッピングできる場所を聞いたところ、紙に「Hwa Jeong」と書いてくれた。
自分には「ファーザン」と聞こえた。
タクシーで5分くらいらしい。
今振り返ると、この地名は聞き間違いだったのかもしれないし、正確にはよく分からない。
でも当時の自分は、そんなことを深く考えず、「よし、行ってみよう」と出発した。
海外で初めてのタクシーは、いきなり難関だった。
メモを見せても、運転手には英語が通じない。
全く通じない。
ジェスチャーと雰囲気でなんとか伝え、ようやく出発したものの、「ちゃんと着くよな……?」と少し不安だった。
到着した場所は、想像していたよりずっと都会だった。
東京でいうと池袋のような規模感に見え、店も多く、人通りもあった。
平日だったからか若者はそこまで多くなかったけれど、普通ににぎわっていて、「当たり引いたかも」と思った。
しばらく街を歩いていると、お腹が空いてきた。
そのとき、どこからかいい匂いがしてきた。
匂いに釣られて向かうと、屋台でおばさんが何かを焼いていた。
見た目はお好み焼きに似ていたけれど、それが韓国のチヂミだった。
ニラがたっぷり入っていて、タレは醤油ベース。
日本のお好み焼きとは全然違う。
とりあえず買ってみたものの、食べ方が分からず戸惑った。
すると、おばさんが気づいてくれて、ハサミで細かくカットしてくれた。
さらにジェスチャーで「こうやって食べるのよ」と教えてくれた。
言葉は通じないのに、優しさはちゃんと伝わった。
食べてみると、シンプルだけど美味しかった。
ニラの風味と焼いた生地、醤油ベースのタレが合っていて、「これ、いいな」と素直に思った。
初めての韓国屋台で、初めてのチヂミ。
この日の一番の思い出になった。
その後は、ゲームセンターに入ったり、公園で少し休んだりしながら、知らない街を一人でぶらぶら歩いた。
言葉は通じない。
看板も読めない。
でも、なんとかなる。
その一方で、ふと「ここ、どこなんだろう」と思う瞬間もあった。
ホテルに戻ってWonに電話すると、明日ホテルまで来てくれることになった。
ありがたかった。
ただ、ここで衝撃の事実も分かった。
どうやら自分がいる場所は、ソウル市内ではなかったらしい。
昨日からずっとソウルにいると思っていたので、「え?」となった。
じゃあここはどこなんだよ、という話なのだけど、この時点ではもう「まあ韓国だし大丈夫か」と思っていた。
今の自分なら、もう少し現在地を気にする。
でも当時の自分は、若さと適当さでそのまま進んでいた。
2日目は、聞き間違いかもしれない地名で移動し、気づいたら知らない街を歩いていた一日だった。
普通に考えたら、不安な状況である。
でも、不思議と楽しかった。
言葉が通じなくても、人の優しさはちゃんと伝わる。
自分がどこにいるのか分からない状況すら、少し面白いと思えた。
それが、海外一人旅の醍醐味なのかもしれない。
そして次の日。
いよいよ、ネットで知り合ったWonと初対面する。
初海外一人旅は、ここからさらに濃くなっていく。